ニュウカサ  Early morning in the Spring

窓の外が、騒がしくて目がさめた。騒がしいといっても、不快ではない。
朝、小鳥のさえずりで起こしてもらうなんて、なんて、贅沢なんだろう。

 そうだ、ここは長野なんだ。手に入りそうな古い民家を、ここに見つけ、
住み慣れた神奈川から、引っ越してきました。
 自然や風景の写真を撮り始めるようになってから、脱都会願望が出て
きてとうとう、そこでのサラリーマン生活をやめ、来てしまったのです。
 すぐ起きて、裏庭に出てみた。相変わらず小鳥たちが、あちこちで鳴いているが、悲しいかな、鳥に関する
知識に乏しく、その鳴き声から、小鳥たちの種類を、特定することができない。
 土の匂いがする。緑の匂いもする。春って、こういう匂いなんだ。
神奈川では、相模原の県営団地の4階に住んでいた。コンクリートとアスファルトの中では、当然こういう匂いは、
しなかった。
 しばらく裏山の緑を眺めながらボーっとしていると、鶏くらいの大きさの鳥が、畑の中を飛ばずに走ってきた。
こいつは見たことがあるぞ。キジだ。ちょっと立ち止まってこっちを見ていたが、すぐに、ケーン、ケーンと鳴いて
今度は走らずに、歩いていってしまった。
 我が家の裏庭をこうやって見回してみると、けっこういろいろなものが植わっている。柿、梅、山椒、たらの木、
イチイ、松、かえで、シャラ、アケビ、アジサイ、福寿草、カタクリ、ミツバ、ノビル、ユキノシタ、ポポー(アケビに
似た実がなる)などなど。これらの中のいくつかが、のちの我が家の食卓に上ったのは言うまでもない。
 野菜の苗とか売りに出てたら買って、育ててみよう。とれたての物、産地に近い物ほどその野菜や果物の
持っているエネルギーとかパワーは強いらしい。


決まった現金収入のないままこっちにきてしまったわけで、とりあえずその道を探さなければならなかった。
月に、何百、何千というカットを、フォトライブラリーにストックしてそれだけで食べていけるプロとは違い、
私の写真で得た収入は、フィルムなどの材料費で消えてしまい、とても生活にまで回らない。そこで、いくら
でもいいから毎月ある程度の決まった現金を確保しなければならなかったのだが、何とかなるさ、と本来の
楽天的な性格で構えていたら、とりあえず何とかなってしまった。
 もちろん、神奈川にいた頃は、それなりのところに勤め、部下もいて、人、物、金を管理する立場にあった
ので、その頃の収入と比べると、激減した。
 しかし、ラッシュアワー、数字に追われる毎日から開放され、特に不満はなかった。とはいえ、収入は、多い
にこしたことはないし、本当は不満だの、不安だのがあったのだろうけど、それらを閉じ込め、覆い隠してしまう 何かが、ここにはあったのだろう。
 いよいよ、都会から田舎に移り住む、アイターン生活の始まりです。

                          


どこから来た。何しに来た。
   

越してきて早々、近所の人に(正確には、隣組仲間)温泉に連れて行かれた。何もそんなに
してくれなくても。と思ったら、話は違った。毎年恒例で、6月ごろ、花見と称して、隣組仲間
同士の親睦を図っていて、隣組長が幹事となって、日帰りで温泉に行き宴会をしているとの事。
あーそうなんだと言うことで、まだみんなの名前と顔が一致しないまま、公民館に待たせてあった、バスに乗り込み、近くの温泉に行き、おおいに楽しんだ。
 ここで都会人に耳慣れない言葉が、隣組である。越してきてまず、区というのに入ることから、
始まる。東京23区などのああいう大きな行政区とは、ちょっと違い、ここでは、100戸くらいの単位で構成され、それがいくつかの常会にわかれ、その常会がまたいくつかにわかれ、その
最小単位が、隣組である。そして、その中で、回覧版とかが回されるのである。
 で、この区にはいるのに入区金を、さらに、毎年、区費というのを収めなければならない。
そしてこの区民(私たちのこと)から徴収された区費で、区の財政が賄われている。そこには、
区長、区会議員、会計など、さまざまな役があり、区にお世話になっている以上、なんらかの
役をやるようになる。かくいう私も、越してきて何年も経たないうちに、隣組長、常会長、公民館
の専門部の部長、神社関係の役など、訳のわからないまま、やらせていただいた。また、年
中行事も多く、そのあとや、会合の後には、なおらいという飲み会があったりする。
 そして、入区して間もない頃のそういう席で、紹介され、そこで、どこから来たんだ?
何しに来たんだ?どこに住んでる?という質問が飛んでくるのである。
 結構、地域の結びつきみたいなものは、都会と比べてはるかに強く面食らうかもしれない。
これから都会を離れ、田舎に住んでみようとお思いの方は、頭にいれておいたほうがいいかも
しれない。
 中には、区に入りたくてもいれてもらえないというような、排他的なところもまだあるように聞く。幸いなことに私のいるここは、みな、気さくで、親切な人ばかりでよかった。


土いじり

 先日、白樺湖浄化センターというところに、頼んでおいた有機肥料を、取りに行った。
これは、白樺湖の汚泥を、処理したものとかで、有機質に富んだいい肥料らしい。値段
は、10kgで150円だったかな?もっとしたかな?どちらにしても、高いものではない。
これを、元肥にして、畑の土に耕しながら、混ぜ込むのだ。おいしい野菜が、できるぞ!
 そのまま帰ってくるのは、もったいないので、車山高原、霧が峰とまわって、帰ってきた。
まだ、これといった花は咲いてなく、これから、レンゲツツジ、ニッコウキスゲときれいな彩りを添えてくれる。単なるハイカーはもちろんのこと、カメラマンにとっても楽しみな季節が、やってきます。
 家に戻って、早速、クワとスコップを取りだし、土おこしをはじめた。
  長さ15cmくらいのミミズがたくさん出てくる。ということは、いい土だということなのかなあ。
先ほどの肥料と、石灰を土に混ぜながら、畝を6本ほど作り、とりあえず終わり。
 少し、土を太陽にさらして、来週にでもマルチをはろう。               
ミニトマトの花
植えたミニトマトの花が咲きました。トマトの花なんてじっくり見たことなかったけど
かわいいもんですね。                                     
ミニトマト
その花が、かわいい実になりました。あとは、真っ赤になるのを待つだけです。  


                                        

                            
                                湘南で過ごした日々